個人再生に関するよくある質問

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小規模個人再生・給与所得者等再生に関する「 よくある質問 」をまとめましたので、ご参照ください。

手続の内容について

個人再生手続は、どんな手続きですか?

 個人再生手続は、裁判所の決定を得て、税金等一部の債務を除いた債務を強制的に減らし、残った債務を原則3年(最長5年)で分割払いする、という手続です。

 債務のうち、住宅ローンについては、手続き中も支払いを継続し、自宅不動産を処分することなく、維持することができるのも個人再生の特徴の一つです。

過去に破産(再生)をしたことがあっても、個人再生手続の申立はできますか?

 できます。

 ただし、給与所得者等再生は、過去に

  • 破産
  • 給与所得者等再生
  • 個人再生手続後のハードシップ免責

等をしている場合、7年間は利用できません(民事再生法239条5項)。

個人再生手続の申立に必要な弁護士費用はどれくらいですか?

 弁護士費用(着手金、及び報酬)、実費、予納金が必要です。

 当事務所における個人再生手続の着手金は、基本料金(住宅ローン条項なし・給与所得者の場合)が33万円(税込)です。
 住宅ローン条項ありの場合、基本料金に、13万2000円(税込)を加算します。
 個人事業主の場合、上記着手金に3万3000円(税込)を加算します。

 その他に、裁判所へ収める切手代や印紙代、交通費などの事件処理のための必要経費として、4万円程度の実費をお預かりします。

 裁判所が再生委員を選任するとした場合は、再生委員の報酬として18万円を裁判所に収める必要があります。

 認可決定が確定した際には、成功報酬5万5000円(税込)が発生します。

ハードシップ免責とは何ですか?

 一定の事情で再生計画に沿った弁済ができない場合に、残った債務の支払義務が免除される制度のことです。

 再生債務者が再生計画の履行を怠ると、債権者の申立によって、再生計画の取り消しをすることができます(民事再生法189条)。

 そして、再生計画の取消しの決定が確定がした場合、裁判所は、再生債務者に破産手続開始の原因となる事実があると認めた場合には、職権で、破産手続開始の決定をすることができます(民事再生法250条)。

 しかし、病気や勤務先の倒産など、債務者には、どうにもできない理由によって、再生計画通りの支払いができなくなるケースも考えられます。特に、すでに再生計画に従って大半の債務の支払いが済んでおり、あと少しで払い終わると言う段階で病気等により支払いができなくなった場合にまで破産させるのは、債務者に酷ではないか、とも考えられます。そこで、一定の場合には、再生計画の全部の履行ができなくても、破産手続によらず、未払い分の再生債権の支払いを免責する制度が設けられました。それが、ハードシップ免責です(民事再生法235条1項)。

 ハードシップ免責の申立には要件があります(民事再生法235条1項)。

  • 再生債務者が、その責に帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となったこと
  • 再生計画における各債権に対して、その4分の3以上の額の弁済を終えている場合
  • 免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反するものではないこと
  • 再生計画の変更をすることが極めて困難であること

 ハードシップ免責は、小規模個人再生、給与所得者等再生のどちらでも利用できます。

 住宅資金条項を利用している場合、ハードシップ免責の効果は住宅ローン債権にも及ぶとされていますから、住宅ローン債権も免責されます。ただ、ハードシップ免責を利用しても、住宅に設定した抵当権は免責されませんから、住宅ローンを一括で支払えなければ、担保権が実行されてしまい、自宅を手放すことになります。

 なお、要件が厳格である上、裁判所は住宅ローン債権者を含む再生債権者に意見を聴かなければならないため(民事再生法235条2項)、ハードシップ免責の申立をしても、必ずしも免責が認められるとは限りません。

認可決定確定後の債権者への弁済について、3年(最長5年)と聞いたのですが、どのようなときに5年まで伸ばしてもらえるのですか?

 再生手続を申立する際に、申立前の直近3ヶ月間(横浜地方裁判所の場合)の家計を裁判所に提出します。

 その目的は、申立人の収入から、生活費を控除し、債権者への支払っていく能力があるのか、つまり履行の可能性があるのかどうかを確認することにあります。

 同時に、申立人の家計状況から、弁済をしていくことができる1ヶ月あたりの上限はどの程度かということも、提出した家計からある程度予測することができます。

 そのため、家計に余裕がある場合に、「3年でも支払えるけど、豊かな生活をするために5年にしてもらいたい」といったような状況では、5年弁済は認められにくくなります。

 他方で、「3年で支払えなくはないけれど、3年で支払おうとすると、生活が逼迫し、生活に無理が生じたり、再生計画案に定めたとおりの支払いができなくなる恐れがある」と考えられる状況であれば、5年弁済が認められやすいと言えます。

 5年での弁済を求める場合には、上記のような事情の他、例えば、子の教育費の増加が見込まれる場合など、「特別な事情」を裁判所に報告して、弁済期間の延長を求めます。

債権者が漏れていることが、個人再生手続の進行中に判明しました。後から追加できますか?

 どの段階で、債権者の計上漏れが発覚するかによって、対応が変わります。

 申立前の段階で、漏れていた債権者が発覚した場合には、受任通知を追加で送付し、申立時の債権者にも含めることができます。

 申立後に債権者が漏れていたことが発覚した場合、債権者の債権届出期間経過前であれば、債権者に債権届を提出するよう求めます。

 債権届出期間が過ぎてしまった場合は、裁判所の判断により、特別調査期日を設けることができ、債権者に債権届を促すことができます。この場合、手続上、追加で官報費用が必要になります。

 なお、再生計画案の付議決定がなされた後に計上漏れが発覚した場合には、債権者を追加することができません。

再生計画案の認可決定後に、債権者が漏れていることが判明しました。この場合、漏れた債権者に対する債務はどうなりますか?

 債権者の計上が漏れた状態で再生計画案が認可された場合、計上が漏れた再生債権についても再生計画案の減免率によって減免され、減免後の金額を支払うことになります(民事再生法232条2項、244条、156条)。

 漏れた債権者以外への弁済を前提に再生計画案の支払い金額を想定していた場合、計上の漏れによって、月々の支払いが想定よりも増えることになりますから、大きな負担となりかねません。

 債権を届出ないことについて債権者に落ち度がある場合には、計上漏れのない債権者への弁済が終わってから、計上漏れした債権者に支払えばよいことになっています(民事再生法232条3項)。

再生計画に従って返済していましたが、病気で収入が減ってしまい、返済ができなくなりました。どうしたら良いですか?

 残った債務の金額や、収入の減少の程度、お持ちの資産の内容、協力者の有無などにもよりますが、おおむね4つの方向性が考えられます。

親族等の援助を得て返済

ご家族に援助してもらい、債務の返済を続けるか、一括で支払う方法です。資産を換金して一括返済する方法もあります。

Case
1

再生計画の変更

「止むを得ない事由」によって、「再生計画を遂行することが著しく困難となった」場合には、再生計画による弁済期間を2年間延長することができます(再生計画の変更。民事再生法234条1項、244条)。もっとも、住宅ローンは従前通り支払いを続ける必要があります。

Case
2

ハードシップ免責

 一定の条件を満たす場合には、残りの債務の免除を受けることができます。詳細は、「Q ハードシップ免責とは何ですか。」をご参照下さい。

Case
3

自己破産、又は個人再生再の申立

 上記の1〜3の方法によることができない場合には、再生計画の取消しを待って、破産手続に移行するか、個人再生を再度申し立てることになります。

Case
4

家族(または同居人)や知人との関係について

借入について、家族(同居人)には内緒にしています。内緒にしたまま個人再生手続の申立はできますか?

 生計(家計)を共にしている同居人(ご家族等)については、申立時に収入に関する資料(給与明細など)や家計の状況を申立時に裁判所に提出をする必要があるため、基本的には同居している家族(同居人)の協力(前提として、家族等への事情の説明)が必要です。

 そのため、同居している家族(同居人)には、債務の状況をお話していただくことをお勧めします。

 同居人が個人再生の申立人と生計を共にしている場合、同居人が家計の一端を担っていたり、家計の変更に強い影響を受けます。そのため、個人再生手続における返済が始まった際には、同居人の協力が不可欠であると考えられるためです。

 どうしても生計を共にしている家族(同居人)にも内緒にしたいという場合、家族(同居人)に内緒にしたまま収入に関する資料等を集めることができるのであれば、申立ては可能です。
 他方で、資料が揃わない場合には、個人再生手続の開始決定が得られない恐れもあります。

家族(同居人)は個人再生手続の申立をすることを知っていますが、非協力的で、必要書類の提出について協力を得られそうにありません。このような場合でも、申立はできますか?

 申立においては、生計(家計)を共にしている同居人(ご家族等)については、申立時に同居人の収入に関する資料(給与明細など)を裁判所に提出をする必要があります。

 とは言え、どうしても同居人から協力を得られないという場合には、裁判所にその旨を報告し、揃えられる範囲の資料で申立することは可能です。
 この場合、資料が揃わないとして、個人再生手続の開始決定が得られない恐れありますから、その点をご承知の上で申し立てを行っていただくことになります。

個人再生手続の申立をしたことは、別居している家族や知人に、知られてしまいますか?

 別居しているや家族や知人の方からの借入があったり、保証人になっていただいているなどの事情があると、その方については、債権者や保証人として、裁判所に申告しなければなりません。この場合、裁判所から債権者に通知が送付されるため、内緒にしておくことはできません。

 一方で、家族や知人の方からの借入がなく、保証人になっていただいている等のご事情もなければ、裁判所からの通知が届くことはありませんし、弁護士が連絡することもないので、基本的には知られることはないと考えられます。

 注意が必要な場合としては、申立をすると、「官報」に掲載されるため、仕事で官報をよく確認するという家族や知人の方がいると、知られてしまう可能性があります。また、別居していても、生計が同一の場合には、別居しているご家族の収入資料等を集める必要が生じ、その過程で事情を説明しなければならなくなることも考えられます。

財産について

銀行口座は凍結されますか?

 口座を持っている金融機関に対して債務がある場合には、その金融機関に対して保証会社が代位弁済をするまで、口座が凍結されます。さらに、口座内に預金が残っていると、債務と相殺されてしまう場合があります。

 債務のない金融機関の口座については、凍結されることはありません。

持っている財産が処分されてしまうことはありますか?

 手続において、財産が処分されることは基本的にはありませんが、場合によっては、自主的に財産処分が必要となるケースがあります。

 財産処分が必要となるケースには、下記のようなものがあります。

  • 物品(典型的には自動車)のローンが残っており、かつ、売主に物品の所有権が残っている場合(所有権留保がある場合)には、債権者から物品を引き揚げられてしまいます。住宅ローン条項を利用しない場合に、抵当権がついている不動産がある場合も同様です。
  • 再生計画案で弁済すべき金額が多額で、定期収入だけでは払いきれない場合には、資産を処分して弁済に回す必要があります。

手続の効果について

個人再生手続によって、滞納している税金を減額することはできますか?

 残念ながら、個人再生手続によって税金を減額することはできません

 税金は、一般的な債権よりも優先して弁済を受けられる権利を持っています。

 そして、個人再生手続による再生債権の弁済と税金の支払いとを並行して行うことになった場合に、税金の支払いができなくなってしまうことを防ぐため、個人再生の申立をする際には、事前に課税庁と協議をして、分割の支払い方法を決めておく必要があります。

 分割の金額や期間については、直接、課税庁にご相談ください。

 「税金等、個人再生手続で減額できない債権の取り扱い(民事再生法122条)」の記事も参考にしてください。

自宅不動産・住宅ローンについて

住宅ローンが親子ローンやペアローンの場合に、自分だけ個人再生手続の申立をすることはできますか?

 基本的には、住宅ローンを組んでいる全員が同時に個人再生手続の申立をします。

 とは言え、負債に困っているのが自分だけで、他の住宅ローン債務者には住宅ローン債務程度しか債務がないような場合には、単独での申立が認められることもあります。

 この場合、再生委員が選任される可能性が高くなります。再生委員が選任されると、裁判所へ収める予納金が追加で18万円必要になります。

自宅不動産が競売にかけられていても、個人再生手続の申立をすることはできますか?

 競売になっていたとしても、申立は可能です。

 可能ではありますが、競売を放っておくと、入札者が現れると自宅が売却されてしまい、手遅れになってしまうため、申立を早急に行う必要性は出てきます。

 「自宅不動産が競売にかけられてしまったらどうなるのか」の記事も参考にしてください。

住宅ローンについて、保証会社に代位弁済されてしまっても、個人再生手続の申立をすることはできますか?

 代位弁済後であっても、個人再生手続の申立はできます。

 なおかつ、自宅を手放したくない場合は、保証会社による代位弁済から6ヶ月以内に個人再生手続の申立を行う必要があります。

 「住宅ローンを滞納し、保証会社に代位弁済されてしまったらどうなるのか」の記事も参考にしてください。

債務は住宅ローンのみです。個人再生手続の申立をすることはできますか?

 債務が住宅ローンのみであっても、個人再生手続の申立をすることは、可能です。

 例えば、住宅ローンを滞納してしまい代位弁済されてしまった場合の巻き戻しや、住宅ローンのリスケジュールのために、個人再生手続を利用することができます。

 また、住宅を諦める場合でも、不動産価値よりも住宅ローンの残額が大幅に上回ることが見込まれるとき(=不動産を売却しても、多額の住宅ローン債務が残ってしまう場合)は、残る見込みの多額の住宅ローンを処理する必要があります。このような場合に、住宅ローンの残額を減らす目的で、個人再生手続を申し立てることができます。

 その場合は、破産手続とどちらが良いか、比較検討することをおすすめします。

二世帯住宅でも、個人再生はできますか?

 利用できますが、要件があります。

 その要件とは、「建物の床面積の2分の1以上が、自分の住居として使われていること」です(民事再生法196条1項)。

 自宅と店舗等の事業を兼用している場合も同様です。

自宅の抵当権に住宅ローンのほかに諸費用ローンが設定されています。住宅資金特別条項は使えますか?

 諸費用ローンは、基本的に、住宅資金貸付債権に該当しません。

 つまり、住宅ローン以外の債務が住宅ローンと同じ不動産に抵当権として設定されている場合、住宅資金特別条項が使えなくなってしまいます。

 ですが、金銭消費貸借契約書等に「諸費用ローン」と記載がされていたとしても、その使途が住宅の購入や建設に密接に関連する資金であることを説明することが可能であれば、住宅資金特別条項の利用を認めてもらえる場合もあります。