法人破産に関する よくある質問

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法人破産に関する「 よくある質問 」をまとめましたので、ご参照ください。

法人破産申立の目的

破産手続では、具体的には何をするのですか。

 破産手続は、破産者(破産会社)に資産があれば、これを換金して債権者に配る手続です。法人については、法人を解散させ、法人格を消滅させる手続でもあります(破産法35条)。

 破産者が個人の場合には、破産手続に加え、免責手続と言って、破産者の債務を免除してよいかどうかを裁判所が判断する手続が行われます。

法人破産申立の効果(法人・代表者・役員への影響)

法人破産をすると、法人はどうなりますか。

 破産手続では、申立代理人、破産管財人及び裁判所が協力して、破産会社の適正な資産処分や債権者への公平な配当が行われます。そのため、破産手続を予定している場合には、破産手続申立前後の法人自身による資産処分や債権者への弁済が制限を受けます。

 また、破産会社は信用を失うため、新たな借入等はほぼ不可能です。従って、事業は停止せざるを得ません(場合によっては、破産管財人が裁判所の許可を受けて事業を継続し、事業を他社に売却できることもあります。)。

 事業停止にあたり、事業所の明け渡しや、従業員の解雇等の撤退業務を行います。

 法律上の取り扱いとしては、裁判所が当該法人に対して破産手続開始決定を行うと、会社は解散することになります(会社法471条5号、641条6号)。

法人破産をすると、代表者はどうなりますか。代表者が破産したくない場合は?

 代表者は、当該法人の破産手続に参加して、破産管財人、裁判所や債権者に必要な説明等を行います。

 代表者は、法人の債務を保証していたり、代表者個人の名義で事業資金の借入をして当該法人に貸付けているケースが多く見られます。そのため、法人が破産すると、代表者個人の負債についても返済の目処が立たなくなるため、法人と同時に破産したり個人再生手続を申立てることが通例です。なお、金融機関からの借入が中心の場合には、経営者保証ガイドラインの利用により、破産せずに債務が整理できる場合もあります(https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/keieihosyou/)。

 法人が事業を停止する場合には、法人からの収入が無くなりますから、代表者においては今後の生活費をどのように賄っていくのか算段をつけておくことをおすすめします。

 代表者が破産したくない場合ですが、そもそも代表者に債務がなければ破産する必要はありません。

 代表者に債務がある場合には、債務の額や返済の目処が立つのかによって、処理方針を変えて行くことになります。債務が少額で、収入の目処が着くのであれば、破産せずとも返済していくことができる場合もあるでしょう。

法人破産をすると、代表者の家族はどうなりますか。

 代表者の家族が法人や代表者の保証人となっていなければ、法人や代表者の債務を請求されることはありません。

 ただ、代表者の破産申立に際して、生計が同一であるご家族の収入資料等を裁判所に提出する場合があります。また、代表者と生計を同一にしている家族が、代表者の収入によって生計を立てていた場合、代表者が資産や収入源を失うことから、代表者と共に転居をしたり、失った収入をどうカバーしていくのか検討せざるを得ない場合が多いと言えます。

 また、法人や代表者から多額の資産を譲り受けていたり、経営状態が悪化してから資産の譲渡を受けているような場合には、譲り受けた資産を法人や代表者に返還しなければならないことがあります。

会社が破産した場合、その会社の取締役であった者は別の会社の役員になったり、新たに会社を設立することはできますか。

 取締役に就任している会社が破産申立をした場合、取締役自身の状況としては、2通りの状況が考えられます。

  1 取締役個人は法人と同に破産しない場合
  2 取締役個人も法人と同時に破産する場合

 それぞれの状況ごとにご案内いたします。

 1 取締役個人は法人と同時に破産しない場合

 会社法上の制限はありませんから、就任予定の会社の定款でそのような状況の取締役就任を禁止していない限り、別の会社の役員になったり、新たに会社を設立したりすること(及び設立した会社の役員になること)ができます。

 2 取締役個人も法人と同時に破産する場合

 会社法上、破産者であることは欠格事由(=取締役に就任できない事情)ではありませんので、たとえあなた個人が破産手続中であっても、別の会社の取締役になったり、新会社を設立したりすることは可能です。ただ、事実上会社の設立資金や事業資金を個人の資産から調達できないので、資金確保をどうクリアするのかが問題になり得ます。

取締役個人が破産申立をする場合、法人での取締役としての地位はどうなりますか。

 会社と取締役との関係は、委任契約の規定に従うとされています(会社法第330条)。そして、委任契約は、委任者又は受任者が破産手続開始決定を受けると、終了するとされています(民法第653条2号)。
 そのため、取締役が破産手続開始決定を受けると、取締役は退任となります。もっとも、破産手続中であることは取締役の欠格事由(=取締役に就任できない事情)ではありませんから、定款で禁止されていない限り、再度取締役に選任されることはできます。

法人が破産申立をした場合、その会社の取締役としての地位に影響はありますか。

 会社と取締役との関係は、委任契約の規定に従うとされています(会社法第330条)。そして、委任契約は、委任者又は受任者が破産手続開始決定を受けると、終了するとされています(民法第653条2号)。
 このルールからすると、会社が破産手続開始決定を受けると、取締役との委任契約が終了し、取締役は退任することになるようにも思われます。
 しかし、破産手続開始決定後も、会社の組織に属する事項等、破産管財人の権限に属しない事務が存在することから、取締役は、当然には地位を失わないと考えられています(株式会社法第8版/江頭憲治郎/有斐閣/412頁、最1小判平成16年6月10日民集58巻5号1178頁他)。
 以上から、当該株式会社が破産手続開始決定を受けても、あなたは引き続き、取締役の地位を有することになります。

法人破産をすると、法人の連帯保証人や物上保証人はどうなりますか。

 法人が破産した場合、債権者は法人の連帯保証人に対して債務の一括払いを請求するのが通例です。連帯保証人はこれを弁済しなければならず、弁済できない場合は連帯保証人自身の破産申立を検討することになります。

 債権者によっては、連帯保証人による債務の分割払いに応じてくれる場合もありますので、連帯保証人において分割払いを希望する場合には、債権者と協議することになります。

 法人の債務を担保するために、第三者が、自己の資産(典型的には不動産)に抵当権を設定させたような場合、その第三者を物上保証人と言います。法人が破産すると、第三者の資産に設定された抵当権が実行されますので、当該第三者はその資産の所有権を失います。物上保証人が当該不動産に居住している場合には、転居先を探す等の対応が必要になります。

事業を停止したまま長期間放置していた法人で、債務だけがそのままになっている状態ですが、破産できますか。

 事業停止から長期間経過していても、破産手続を申し立てることは可能です。

 なお、事業停止から5年以上経過している場合には、債務が時効消滅していないかについても検討します。債務が全て時効消滅していれば、破産手続の申立ては不要です。

法人破産申立の効果(従業員、取引先、債権者への影響)

法人が破産すると、従業員の身分はどうなりますか。

 会社は破産手続申立に先立って事業を停止するのが通例ですから、残念ですが従業員は解雇することになります。

 なお、事業を売却できる場合には、従業員を買取先の法人に移籍させることもあります。

法人が破産すると、従業員の給与や退職金はどうなりますか。

 未払い給与や退職金は、法人の資力と債務の状況によって、払える場合もあれば払えない場合もあります。

 支払える場合でも、破産手続申立前に支払うのか、申立後に破産管財人から支払いが行われるのかについては、状況次第です。とはいえ、従業員の生活資金を確保する必要性が高いことから、法人に資力があれば、短期間分の未払い給与については申立前に支払われることが多いと言えます。

 法人からは未払い給与等の支払いができない場合でも、一定の条件を満たせば、独立行政法人労働者健康安全機構による未払賃金立替払制度が利用できます。もっとも、手続には賃金台帳やタイムカード等の資料を確保しておく必要がある他、元従業員の手元に同機構からの立替金が送金されるまで数ヶ月かかりますので、その点は注意が必要です。なお、立替払される金額は、未払賃金総額の100分の80の額(退職日の年齢により定められている限度額を超える場合は、限度額の100分の80の額)です。同機構からの立替払を受けても残ってしまった未払賃金相当額については、破産手続の中で、破産会社の資産があれば、優先的に配当を受けることができます。

 なお、従業員を解雇する場合には、資産に余力があれば、解雇予告手当(最大1ヶ月分の給与相当額)の支払いを検討します。

 参考:独立行政法人労働者健康安全機構ホームページ

労働者の救済制度はありますか。

 破産会社を解雇された従業員については、いわゆる失業手当が支給される他、法人の資力によっては、未払い給与や退職金、解雇予告手当が支払われます。

 もっとも、それでも生活が成り立たない場合は、セーフティーネットを紹介することになります(生活保護等)。

 未払給与や退職金の支払いができない場合には、要件を満たせば、上記「Q 法人が破産すると、従業員の給与や退職金はどうなりますか。」に記載している独立行政法人労働者健康安全機構による未払賃金立替払制度があります。

法人破産と法人の資産

法人が破産すると、本社や事業所の建物はどうなりますか。

 事業に用いている不動産が自社所有の物件であれば、破産手続申立前に売却するか、破産申立後に破産管財人が売却します。もっとも、不動産の売却には時間がかかりますし、適正額で処分しなければなりませんから、破産手続申立後に破産管財人が対応するのが通常です。

 事業に用いている不動産が借りたものである場合には、貸主に返却する必要があります。破産手続申立前に時間的に余裕があれば、中の荷物等を処分してから明け渡すこともあります。

 他方、時間的に余裕がない場合には、破産手続申立後に破産管財人が明け渡し等の対応を行うことになります。その場合、破産管財人が法人の什器備品を撤去できるように、予納金(=破産手続申立時に、裁判所に納付する金銭。金額は、20万円以上。)を十分に準備する必要があります。また、明け渡しまで賃料が発生してしまうので、速やかに申立を行わなければなりません。

法人が破産するとき、法人の資産(什器備品等)はどうなりますか。

 法人が事業に用いていた什器備品、事務機器、工作機械などは、法人の所有物であれば、売却できるのであれば売却し、値段が付かないのであれば処分することになります。

 ただし、パソコン類で帳簿や人事労務のデータ等が入っているものは、破産管財人に引き継ぐことを検討します。書類やデータは、個人情報の漏洩に注意が必要です。なお、資産価値のある動産が盗難に遭うこともありますので、破産申立準備期間中から破産管財人に引き継ぐまでは、管理に注意が必要です。

 法人が所有していない動産類は、所有者に返却します。リース物件や、従業員の私物などがこれに当たります。

決算書を作成していないのですが、破産申立はできますか。

 結論としては、申立て可能です。ただし、法人の資産状況や破産に至る経過が分かりにくくなりますから、その点のフォローをすることが望ましいと言えます。

 設立時から一度も作っていないのか、それとも前期までの決算書はあるけれども今期分がまだできていないというだけなのか、というように、一口に決算書を作成していないと言っても程度の差がありますので、状況に応じてできる限りの準備をして申立をすることになるでしょう。

法人破産と取引先、債権者との関係

破産申立前に、とてもお世話になった取引先にだけ、返済しても良いでしょうか。

 特定の債権者だけに弁済すると、その取引先が破産管財人からの責任追及を受けたり、訴訟に巻き込まれたりするおそれがあり、返って迷惑になりかねません。ですから、そのような弁済はお控え下さい。

 破産手続開始時に破産者が保有していた財産は、破産財団を形成し、破産財団から必要経費等を差し引いて、残りが債権者に配当されます。もし破産手続申立前に特定の債権者だけに弁済すると、破産財団が小さくなり、債権者への配当が少なくなったり、配当できなくなったりして、弁済を受けられた特定の債権者と弁済を受けていない他の債権者との間に不公平が生じてしまいます。

 そこで、破産手続申立直前の資産処分は、破産管財人が取り消すことができます。この権限は、「否認権」と呼ばれています。破産管財人は、この「否認権」を行使して「お世話になった取引先」への弁済を取消し、金銭の返還請求をすることができるのです。

取引先に迷惑をかけたくありません。どうすれば良いでしょうか。

 お考えの「迷惑」がどのようなものかによって、対応は変わってきます。

 具体的には、①取引先に対する買掛金を支払えない、②受注品の納品ができない、③今後取引ができない、④取引先にも破産手続に参加してもらわなければならない、などが考えられます。

 ①については、どこかの時点で支払えなくなるのであれば、買掛金が増える前に破産を申立てた方が誠実だと考えることもできるはずです。

 ②については、受注品の完成状況によって対応が変わります。完成間近であれば、完成及び納品してから破産を申立てることも選択肢の一つです。

 ③は、貴社商品を他から入手可能であれば、入手ルートを教えることも可能です。他方で、他から入手不能であれば、取引先に製造方法を譲渡したり、事業ごと買い取ってもらうことを検討することも出来ます。

 ④ですが、債権者が参加したくない場合には、債権者集会に行く必要はありませんし、配当をもらうつもりがなければ債権の届出も不要です。

 以上は一例です。状況に応じて、適した方法を考えて行くことになります。

今後の仕入れはどうしたら良いでしょうか。

 破産申立の可能性がどれくらいあるのかによって変わって来ます。

 近々申立予定であれば、仕入れは停止することになるでしょう。他方で、積極的に再建を考えているのであれば、必要な仕入れは継続することになると思います。中間の場合には、破産手続申立時に「破産すると分かっていながら仕入れたのだから、詐欺だ。」というようなクレームを受けないようにする工夫が必要です。

未回収の売掛金がありますが、どうなりますか。

 支払い予定日や会社の資産状況によって、回収してから申立てるのか、破産管財人に回収してもらうのかが変わります。

 いずれにせよ、入金先口座を申立代理人口座等に変更してもらうことが多いです。

債権者から、担保の提供を求められましたが、応じても良いでしょうか。

担保の提供については、下記のような状況が考えられます。

1 法人の資産への担保権の設定

 支払不能(※1)後において、法人の資産に担保を設定すると、偏頗行為として破産管財人に否認される対象になります(破産法第162条1項1号)。偏頗行為というのは、他の債権者には行わないのに、特定の債権者に対してだけ行う不公平な行為を言います。
 もっとも、新たに融資を受ける際に、融資額に見合った担保を設定する場合には、否認対象となりません(破産法162条1項柱書括弧書き)。

※1 「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(破産法第2条11号)を言います。

2 代表者による連帯保証や物上保証

 代表者が法人の債務について連帯保証をしたり、代表者個人の資産に抵当権等の担保権を設定した場合(物上保証と言います。)において、その後に代表者個人が破産を申し立てると、破産管財人から否認される可能性があります。

 上記の通り、1も2も、担保を差し出しても否認される可能性が高く、返って債権者の期待を裏切ったり負担を増やすことにもなりかねません。また、債権者集会が紛糾したり、2の場合には、他の債権者から、厳しい免責意見を申述される要素ともなり得たりしますので、破産申立を具体的に考えているのであれば、控えた方が良いでしょう。

債権者に訴訟を起こされました。どうしたら良いですか。

 まずは訴状の内容を確認し、応訴することになります。

訴訟提起されていても破産手続の申立ては可能ですから、破産手続を考えている場合には速やかに申立てを行います。
 破産手続開始決定後の訴訟の取り扱いは、破産財団に関する訴訟は、訴訟手続が中断したり、破産管財人が引き継いだりします。
 破産手続が終了すると、破産会社は消滅してしまいますから、破産債権に関する訴訟は当然に終了することになるでしょう。

 なお、会社の組織上の争いについての訴訟は、破産財団に関する訴訟(破産法44条1項)ではないので、訴訟は中断せず、そのまま続くことになります。この場合、破産者が訴訟追行することになります(破産管財実践マニュアル(第2版)/青林書院/野村剛司他著/95頁)。

法人に関する税金の滞納は、どのように対応したら良いでしょうか。

 滞納税金の支払いは、偏頗行為否認の対象となりません(破産法163条3項)ので、基本的には弁済しても後から取消されることはありません。

 もっとも、破産申立費用までをも税金支払いで使い切ってしまっては、破産手続の申立てができません。また、従業員の給与の支払いと滞納税金の支払いのどちらを優先させるのかについて、悩ましい場面もあるかもしれません。従って、申立代理人とよく協議した上で方針を決めるのがよいでしょう。経験上は、まずは破産手続を申立て、破産管財人から税金を支払ってもらう方法をとることがほとんどです。

 なお、一般債権に基づく差し押さえと異なり、破産手続開始決定「前」になされた滞納処分に基づく差押は、破産手続開始決定によっても解除されません(破産法43条2項)。
 ですから、滞納処分に基づく差押が予想される場合には、速やかに破産手続の申立てを行って破産手続開始決定を受けないと、差し押さえにより破産申立費用が不足するおそれが生じます。

法人に関する税金の滞納について、代表者個人へ請求されることはありますか。

 原則として、法人の滞納税金について、代表者個人が支払いをする義務はありません。ほとんどのケースが、こちらの原則に該当します。

 例外として、代表者が法人の税金について保証していたり、法人の重要な財産を代表者が無償又は廉価で譲り受けている場合(第二次納税義務を負う場合)には、税金を支払う必要が生じます。

 また、代表者が、合名会社の社員や合資会社の無限責任社員である場合には、合名会社又は合資会社の無限責任社員であるという理由から、法人の滞納税金を支払う必要があります(会社法576条2項、3項、580条1項)。

法人破産の手続について

法人破産には、どのような費用がかかりますか。

 弁護士費用(着手金)、実費、予納金が必要です。

 当事務所における法人破産の着手金は、38万5000円(税込)以上です。
 法人の事業規模や処理内容等の状況により、加算または減額をいたしますので、詳細はご相談時にお問い合わせください。

 その他に、裁判所へ収める切手代や印紙代、交通費などの事件処理のための必要経費として、3万円程度の実費をお預かりします。法人の規模や債権者の数が大きい場合や、資産処分作業が必要になる場合には、より多額の実費が必要になることもあります。

 また、破産管財人の費用や債権者への配当原資として、裁判所に収める予納金が最低20万円必要です。法人の規模や予想される業務に応じて、さらに高額な予納金を裁判所より求められることもあります。

 なお、申立時の法人の資産(現金・預貯金)は、申立代理人において全額預かり、破産管財人に引き継ぐことになります。

 代表者等の自己破産を同時に申し立てる場合には、別途、個人の自己破産費用が発生します。

法人破産は、どの裁判所に申立するのですか。

 破産事件の管轄は、破産法第4条以下で細かく規定されています。大抵の事件は、下記の内容で処理できると思われます。

1 裁判所の種類(事物管轄)

 裁判所には、簡易裁判所、地方裁判所、高等裁判所など、いくつかの種類があります。破産手続は、「地方裁判所」又はその支部に申立てます。

2 どの場所にある裁判所に申し立てるのか(土地管轄)

原則的な対応

 申立人が法人の場合には、主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てます。小規模な法人で本店で事業を行っている場合や、すでに営業をしておらず、営業所がないという場合には、本店所在地を管轄する地方裁判所に申し立てること多いと思われます(破産法第5条1項、民事訴訟法第4条)。

 申立人が個人の場合は、住所地を管轄する地方裁判所に申し立てるのが原則です。自営業者は、「主たる営業所」の所在地を管轄する地方裁判所にも申し立てることもできます(破産法第5条1項)。

例外的な対応

 いくつかの破産事件を同時に処理した方が良いような場合には、特例があります。

 例えば、法人代表者の破産は、法人の破産事件を担当している裁判所に申し立てることができます(逆もまたしかりです。破産法第5条6項。)。

 また、親子会社についても、一方の会社の破産事件を担当している裁判所に破産申立てをすることができます(破産法第5条6項)。

代表者は現在神奈川県在住ですが、法人は地方にあります。申立をする裁判所はどこになりますか。

 どの場所にある裁判所に申し立てるのかについて、一般的な基準は「Q  法人破産は、どの裁判所に申立するのですか。」をご参照ください。

 今回のケースでは、次の3つの地域を管轄する地方裁判所のどれかになると思われます。

  • 神奈川県
  • 法人の本店所在地
  • 法人の主たる営業所の所在地

 いずれを選択するのかは、法人の本店や営業所の明け渡しが済んでいるのかどうか、地方に法人の資産があるかどうか、神奈川県からの距離、代表者による破産管財人との打ち合わせや債権者集会への出席の容易さなどの事情から、総合的に決めることになります。

破産する法人の事業を買いたいと言ってくれる人がいます。事業を譲渡することは可能ですか。

 購入希望者がいる場合に、会社の事業を譲渡することについて、結論から言えば、可能です。

 ただし、注意点もあります。会社の事業は会社の資産でもありますから、適正な対価で譲渡しなければ、譲渡会社が破産した後に、破産管財人から譲渡行為を否認される可能性があります。否認されると、譲渡行為が取消となり、譲渡財産が譲渡会社(厳密には破産財団)に戻ることになります。破産管財人は改めて事業を譲渡し直して、売却代金を譲渡会社(破産会社)の破産財団に加えて、財団債権や破産債権への弁済・配当を行う原資とします。こうなると、最初に事業譲渡を受けた会社が損失を被る恐れも出てきます。

 従って、基本的には、事業を継続したまま破産手続を申し立て、事業譲渡は破産管財人に実行してもらうという方法が、手続的に適正で望ましい方法です。
 破産管財人は、裁判所の許可(36条)を得て、事業を継続しつつ、事業譲渡を進めることができます(破産法78条2項3号)。

法人が破産しても、代表者が個人事業として事業を継続することはますか。

 個人事業として代表者が事業を継続することの可否については、破産する会社の事業を個人が譲り受けるとなると、買受けるだけの資産が必要となります。それが準備できるのであれば、適正価格で破産管財人から購入することも考えられます。

 もっとも、代表者が法人として営業しながら経営が立ち行かなくなって破産に至るのが通常だと思われますので、個人事業として再スタートした時点で黒字化の目処が立っていない限りは、再度失敗するおそれもあります。慎重な検討が必要だと思われます。

 なお、会社の資産を引き継がず、同種の事業を一から個人事業として行うことについても可能です。