1 組合 の種類
組合 という言葉は、比較的耳にすることが多いと思います。労働組合、管理組合や、協同組合などが特によく登場します。組合には沢山の種類があり、根拠となる法律も様々です。
組合の一例 | 根拠法 | 備考 |
---|---|---|
民法上の組合 | 民法、有限責任事業組合契約に関する法律 | 「組合」という名称がつかないこともあります(無尽講など。)。実態で判断します。 |
労働組合 | 憲法、労働組合法 | |
マンション管理組合 | 区分所有法 | |
協同組合 | 農業協同組合法、中小企業等協同組合法など、様々 | |
匿名組合 | 商法 |
このページでは、民法上の組合について、民法上の取扱いを中心に以下記載しています。
2 民法上の 組合
(1) 民法上の組合の概要
民法上の 組合 とは、事業目的のために組合財産を出資して成立する団体のことで、法人格はありません。
業務執行は、各組合員が行うか、組合員が選んだ業務執行者が行います。
組合の財産は、全組合員で合有しています。合有というのは、共有の一種ではありますが、共有よりも財産処分の自由度が低い状態です。例えば、組合財産の共有持分の分割を求めることはできません。
(2) 民法上の組合と、似た制度との違い
似た制度 | 法人格 | 目的 |
---|---|---|
民法上の組合 | なし | 必要 |
民法以外の組合 | あるものが多い | 必要 |
共有状態(不動産の共有等) | なし | 不要 |
会社 | あり | 必要 |
(3) 契約・規約による運営
民法の規定は、組合の細かい取り決めまでは規定していません。例えば、業務執行を組合員自ら行うのか業務執行組合員が行うのか、後者だとすればその選任方法や人数をどうするのかと言った点は、組合員の選択に委ねられています。
そこで、民法に記載のない部分は、組合契約や規約を作成して決定していくことになります。
その際注意すべきなのが、強行規定です。強行規定とは、民法で定められたある規律のうち、契約や規約でこれと反する内容を定めることができないものを指します。これとは反対に、民法で定められていても、契約や規約で異なる定めができるものを、任意規定と言います。
組合契約や組合規約で強行規定に反した定めを入れてしまうと、その定めは無効になってしまい、混乱の原因となります。
強行規定の具体例を一つ紹介します。民法678条2項は、「組合の存続期間を定めた場合であっても、各組合員は、やむを得ない事由があるときは、脱退することができる。」と定めています。最高裁は、同項を強行規定であるとし、「やむを得ない事情があっても脱退を許さない」旨の組合契約の条項が設けられたときは、同項に反し無効であると判断しています(最三小判平成11年2月23日)。
このように、強行規定には注意が必要ですが、他方でどれが強行法規なのかについては民法に明示されていないため、判例や学説等から慎重に判断していく必要があります。
(4) 組合の財産は誰のものか
法人格がある場合には、団体の財産は法人に帰属します。では、法人格のない民法上の組合では、組合財産は誰のものになるのでしょうか。
結論としては、組合財産は、組合員個人に帰属します(民法668条)。もっとも、不動産を複数人で所有する場合のような「共有」とは異なり、組合員が「合有」するものとされています。
「共有」と「合有」の違いは、団体のための財産であることから、「合有」の方が構成員による自由処分が制限される点にあります。
具体的には、民法上の組合には次のような財産処分の制限があります。
- 組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができない(民法676条3項)。
- 組合員は、組合財産である債権について、その持分についての権利を単独で行使することができない(民法676条2項)
- 組合員が組合財産についての持分を処分しても、組合及び組合と取引をした第三者に対抗できない(民法676条1項)。
(5) 財産の管理は誰がするのか
組合財産の管理・処分は、組合員全員で行うのが原則です(民法670条1項)。
しかし、組合員が多数のためそれでは機動性に欠ける場合等、不都合が生じる場合も考えられます。そこで、業務執行者を選び、業務執行を任せることができます(民法670条2項)。なお、業務執行者は、組合員以外の者でも構いません(民法670条2項)。
(6) 組合財産の処分について
組合 の集団的な意思決定として、組合財産を処分することは出来ます。
これに対して、各組合員が共有している組合財産の共有持分については、各組合員が処分することはできません(民法676条1項)。組合に出資された財産の持分権が、いつのまにか第三者に移転していると、組合の事業に組合財産を使えなくなるおそれがあるためです。
そのため、各組合員は、組合財産に対する持分を売却したり、持分に信託を設定することは出来ないと考えられます。
(7) 組合 から抜けたい場合(脱退)
どんな場合に脱退できるか
民法上は、次の表の区分に従い、任意に脱退することが出来ます。
原則 | 例外 | |
---|---|---|
組合の存続期間の定めがないとき | いつでも脱退できる(民法678条1項本文。)。 | やむを得ない事由がある場合を除き、組合に不利な時期に脱退することができない(民法678条1項ただし書き。)。 |
ある組合員の終身の間組合が存続すべきことを定めたとき | ||
組合の存続期間の定めがあるとき | 存続期間満了まで脱退できない。 | やむを得ない事由があるときは、脱退することができる。 |
実務上は、組合契約や規約により、脱退の条件や手続を定めることが多いと思われます。
任意の脱退以外では、組合員が、①死亡したとき、②破産手続開始の決定を受けたとき、③後見開始の審判を受けたとき、又は④除名されたときに、脱退するものとされています(民法679条)。
脱退時の清算
組合から一部の組合員が脱退した場合には、脱退時の組合の資産状況に従って、持分の払い戻しを行います(民法681条1項)。
払い戻しの方法としては、脱退を申し出ている組合員が現物を出資した場合でも、現金で払い戻すことが出来ます。
脱退者が出た場合には、脱退者の持分の分だけ他の組合員の持分が増えるので、組合財産に不動産がある場合には持分の移転登記をすべきと考えられます。
組合の債務については、脱退時までに発生してた債務については、脱退組合員も、引き続き弁済義務を負います(民法680条の2第1項)。
実務上は、払い戻しではなく、組合の許可等を条件に、他の組合員又は新組合員候補に持分を譲渡させる方法を取ることもよく見られます。
(8) 組合の解散
解散する場合
民法上は、次の解散事由が規定されています。
一 組合の目的である事業の成功又はその成功の不能
二 組合契約で定めた存続期間の満了
三 組合契約で定めた解散の事由の発生
四 総組合員の同意
また、「やむを得ない事由」があるとき、各組合員は、他の組合員全員に通知して、組合の解散を請求出来ます(民法683条)。
解散後の手続
組合が解散した場合には、組合員全員により、又は組合員が選定した清算人により、清算を行うことになります。具体的には、組合の債務を弁済し、なお資産が残れば組合員に分配します。
(9) 民法上の 組合 の法務
当事務所では、組合規約の作成・修正、組合と組合員とのトラブルへの対応、組合と第三者とのトラブルへの対応、組合に関する訴訟対応の取扱いをしております。
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