自己破産手続に関する よくある質問

自己破産手続に関する「 よくある質問 」をまとめましたので、ご参照ください。

手続の内容について

破産手続は、どんな手続ですか?

 破産手続では、破産者の財産をお金に変えて、債権者に対して分配を行います。

 また、破産者が個人の場合には、同時に「免責手続」と言って、破産者が今後債務を支払わなくて良いかどうかを裁判所が判断する手続が行われます。破産者にとっては、この免責を得るために破産を申立てることが多いと考えられます。

 破産者が法人の場合には、免責手続はありません。株式会社を例に取ると、破産手続が開始すると、株式会社は解散し(会社法471条5号)、破産手続終了後に法人格が消滅(破産法35条)します。そのため、法人に対する債権も消滅することになります。

過去に破産(再生)をしたことがあっても、また破産の申立はできますか?

 できます。

 なお、過去に①破産、②給与所得者等再生、③小規模個人再生後のハードシップ免責等をしている場合、原則7年間は免責されません(破産手続自体はできます。)。

 例外として、事情によっては、裁判所による「裁量免責」によって、免責を受けられることもあります。諦めずに申立てをして見る価値はあると思います。

破産申立に必要な弁護士費用はどれくらいですか?

 弁護士費用(着手金、及び報酬)、実費、予納金が必要です。

 当事務所における自己破産の着手金は、22万円(税込)です。
 免責不許可事由がある場合には、3万3000円(税込)加算します。

 その他に、裁判所へ収める切手代や印紙代、交通費などの事件処理のための必要経費として、3万円程度の実費をお預かりします。

 また、管財事件となった場合には、破産管財人の費用や債権者への配当原資として、裁判所に収める予納金が最低20万円必要です。ご自身の資産状況や予想される業務に応じて、さらに高額な予納金を裁判所より求められることもあります。
 なお、予納金は、申立代理人において全額預かり、破産管財人に引き継ぐことになります。

 免責許可決定が出た際には、成功報酬が発生します。
 同時廃止事件の場合は11万円(税込)、管財事件の場合には22万円(税込)となります。

予納金とはなんですか?

 裁判所に納める手続費用のことです。申立ての弁護士費用とは別に納付が必要です。

 官報の掲載費用(1万5000円弱)は、破産手続の類型に関わらず納付が必要です。

 そのほかに、管財事件の場合には、破産管財人の報酬であったり、債権者への配当原資として納める金員が必要となるところ、この金員も予納金です。この場合の予納金の額は、20万円以上です。

自己破産手続の申立で債権者が漏れていました。追加できますか?

 どの段階で、債権者の計上漏れが発覚するかによって、対応が変わります。


 申立前の段階で、漏れていた債権者が発覚した場合には、受任通知を追加で送付し、申立時の債権者にも含めることができます。

 申立後に債権者が漏れていたことが発覚した場合、破産手続開始決定前であれば、漏れていた債権者を追加した債権者一覧表の差替え分を裁判所に送ります。

  破産手続開始決定後であっても、破産手続廃止(終結)決定前の場合は、同時廃止事件であれば、申立人(または申立代理人)が債権者追加の上申書を裁判所に提出することになります。管財事件であれば、破産管財人から債権者に債権届出を提出してもらうように通知を出します。破産管財人から通知を出しても、届出をしなかあった債権者は、債権がないものとみなされます。

 免責許可決定が確定した後に債権者漏れが発覚した場合、漏れた債権者についても免責されるのが原則です。
 もっとも、わざと債権者一覧表に載せなかった場合や、過失があって債権者一覧表に載せなかった場合には、「非免責債権」(破産253条1項6号)に該当し、免責の効果が及ばないことになりますから、債権者から請求を受けることになります。とは言え、債権者が「非免責債権」に該当するとして、必ず請求をするとは限りません。もし債権者漏れが判明した場合には、債権者の意向を踏まえながら対応することになります。

家族(または同居人)や知人との関係について

借入について、家族(同居人)には内緒にしています。内緒にしたまま自己破産手続の申立はできますか?

 同居人の収入に関する資料(給与明細など)や家計の状況を申立時に裁判所に提出をする必要があるため、基本的には同居している家族の協力(前提として、家族への事情の説明)が必要です。

 そのため、同居している家族には、債務の状況をお話していただくことをお勧めします。

 どうしても同居している家族にも内緒にしたいという場合、家族に内緒にしたまま収入に関する資料等を集めることができるのであれば、申立ては可能です。
 他方で、資料が揃わない場合には、自己破産手続の開始決定が得られなかったり、本来であれば同時廃止手続(=簡易な手続)で済むものが、管財手続(=正式な手続)になってしまったりする恐れがあります。

家族(同居人)は自己破産手続の申立をすることを知っていますが、非協力的で、必要書類の提出について協力を得られそうにありません。このような場合でも、申立はできますか?

 申立においては、同居人の収入に関する資料(給与明細など)を裁判所に提出をする必要があります。

 とは言え、どうしても同居人から協力を得られないという場合には、裁判所にその旨を報告し、揃えられる範囲の資料で申立することは可能です。
 この場合、資料が揃わないとして、自己破産手続の開始決定が得られなかったり、本来であれば同時廃止手続(=簡易な手続)で済むものが、管財手続(=正式な手続)になってしまったりする恐れがありますから、その点をご承知の上で申し立てを行うことになります。

自己破産手続の申立をしたことは、別居している家族や知人に、知られてしまいますか?

 別居しているや家族や知人の方からの借入があったり、保証人になっていただいているなどの事情があると、その方については、債権者や保証人として、裁判所に申告しなければなりません。この場合、裁判所から債権者や保証人に通知が送付されるため、内緒にしておくことはできません。

 一方で、家族や知人の方からの借入がなく、保証人になっていただいている等のご事情もなければ、裁判所からの通知が届くことはありませんし、弁護士が連絡することもないので、基本的には知られることはないと考えられます。

 注意が必要な場合としては、申立をすると、「官報」に掲載されるため、仕事で官報をよく確認するという家族や知人の方がいると、知られてしまう可能性があります。また、別居していても、生計が同一の場合には、別居しているご家族の収入資料等を集める必要が生じ、その過程で事情を説明しなければならなくなることも考えられます。

財産について

銀行口座は凍結されますか?

 口座を持っている金融機関に対して債務がある場合には、その金融機関に対して保証会社が代位弁済をするまで、口座が凍結されます。さらに、口座内に預金が残っていると、債務と相殺されてしまう場合があります。

 債務のない金融機関の口座については、凍結されることはありません。

持っている財産が処分されてしまうことはありますか?

 自己破産手続において、破産者が【「一定以上の資産」を持っている場合】、管財事件となり、破産管財人によって、価値のある財産は換価され、処分されてしまいます。

 なお、「一定以上の財産」がある場合でも、通常、家財道具や家電製品は差押禁止財産に該当するか、無価値なものとして資産処分の対象から外れることが大半であり、この面から日常生活に支障を来すことはほとんどないと言えます。

 「一定以上の資産」の具体的内容は、神奈川県内の裁判所の場合、次の通りです。

・現金・・・33万円以上

・預貯金、生命保険、自動車などその他の財産・・・各項目ごとに20万円以上

 →Ex. 預金が3行に合計18万円ある場合には、破産手続内で処分されません。他方で、合計40万円ある場合には、原則として40万円全額が処分対象になります。

 なお、神奈川県内の裁判所においては、上記の「一定以上の資産」の基準を超える資産を持っている場合でも、自由財産拡張の申立を行えば、総額99万円までは、財産を持ち続けることを認めてもらえる場合があります(自由財産の拡張)。そのため、生活費必要な最低限の資産は残すことができます。

 「自己破産手続 における財産の扱い」の記事も参考にしてください。

 【破産管財人による換価以外に資産が処分されるケース】として、資産が担保に提供されている場合があります。例えば、物品(典型的には自動車)のローンが残っており、かつ、売主に物品の所有権が残っている場合(所有権留保がある場合)には、債権者から物品を引き揚げられてしまいます。

 【「一定以上の財産」がない場合】には、資産の処分はなされません。

 

退職金はどうなりますか?

 退職金も財産として扱われます。

 退職金は、「申立時点で退職をしたとすれば、支払われる退職金額」を基準とし、申立時点での退職金の8分の1の金額を財産として考えます(横浜地方裁判所の運用。)。ただし、退職が間近に迫っていると、これとは異なる扱いになる場合があります。

 もし、8分の1の金額が20万円以下であれば資産にはカウントされませんが、20万円を超える場合は、8分の1に相当する金額を破産財団に組み入れます。

 なお、換価のために、実際に会社を退職させられるということはありません。

自宅不動産はどうなりますか?

 自宅不動産については、住宅ローンの残額と、不動産の評価額(査定額)を比べたときに、不動産に価値が残るかどうかで、扱いが変わります。

 例えば、住宅ローンが2000万円残っていたとして、不動産の評価額(査定額)が1500万円であれば、不動産を売却したとしても、債務が残ってしまいます。そのような場合には、不動産の価値は0円として扱われます。
 一方で、住宅ローンが2000万円残っていて、不動産の評価額(査定額)が2500万円だった場合は、不動産には500万円の価値があると評価されます。

 評価額によって、同時廃止型となるか管財型となるかが変わります。

 なお、どちらにしても、住宅ローンの支払いができない以上、債権者によって競売手続が取られたり、破産管財人によって任意売却されるなどして、自宅不動産は処分することになるでしょう。

 自宅不動産の処分を避けたい場合には、個人再生手続を取るか、自宅不動産を協力者に適正金額で買い取ってもらうなどの工夫が必要です。

自宅不動産が競売にかけられていても、破産手続は利用できますか?

 できます。
 ただし、自宅不動産は、そのまま競売続行により処分されるか、または破産管財人により任意売却される見込みですから、ご自身の財産として所有し続けることはできなくなります。

破産手続の効果について

破産手続を申し立てると、どうなりますか?

 破産手続が開始した時点で、一定以上の財産がある場合には、破産管財人によって申立人の財産は売却等により換金されます。

 そして、管財人の報酬や事務費などを差し引いてあまりがあれば、法律で定められた順序によって弁済が行われます。全部の債権者に満額の返済はできない場合が通常であり、その場合には再見学に応じて配当が行われます。

 一定以上の財産がない場合には、破産管財人による換金等の手続は、省略されます。

 また、免責について裁判所が判断を行います。免責が許可されると、一定の例外を除いて、債務を支払う必要がなくなります。

 破産手続が始まると、同時廃止事件をのぞいて、郵便物が破産管財人に転送される、転居や海外旅行に許可が必要になると言った日常生活への制限も発生します。

滞納している税金や社会保険料も免責されますか?

 自己破産手続によって税金や社会保険料が免責されることはありません(破産法253条1項1号)。
 
 税金や社会保険料は、非免責債権と言って、免責されない債権に該当するためです。これらの税金等の債務がある場合には、課税庁と協議をして、分割の支払いをしていくことが現実的でしょう。

 破産手続をしたからと言って放置してしまうと、資産に対して差押えを受ける可能性も否めません。